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やはり法人化した方がお得なのか?

どのタイミングで法人化するべきか?

法人化しない方が良いケースは?

 

アパート・マンション経営が軌道に乗ってくると、法人化した方が良いのか気になってくるところだ。一般的には法人化した方が融資や税金の面でお得だと言われるが、メリットもあればデメリットもある。どちらがお得なのかは、一概には言えない。

また、「家賃年収が1,000万円を超えたら法人化すべき!」などという噂もよく聞くが、本人の目標や立場などによって、そのタイミングは異なってくる。

 

ここでは、個人事業主と法人ではどのような点で違いがあるのか、結局はどちらがお得なのか、あらゆる角度から考察してみる。次の物件を個人で買うべきか、法人で買うべきか、迷っている方は、是非参考にしてほしい。

 

個人事業主と法人の違いとは?


個人事業主と法人では、次のような点で違いが出てくる。

  • 融資条件の違い
  • 税率の違い
  • 保険料の違い
  • 損失繰越期間の違い
  • 売却益の取り扱いの違い
  • 減価償却の違い

 

融資条件の違い

法人化すれば金融機関からの融資が受けやすくなる、と思う方もいるかもしれないが、それは少し早計だ。法人化により融資が受けやすくなるのは、法人を設立してから何期か実績を積んでからだ。

設立したばかりの法人に融資する場合は、あくまでもオーナー個人の属性や物件の収益性などが重要になる。その為、個人事業主と比較しても融資条件に明確な違いは無い。

ただし法人の場合、受けられるローンに幅が出てくる。個人事業主が融資を受ける時は、
「アパートローン」を利用するのが一般的だと思うが、法人化すると「プロパーローン」(事業性設備資金融資)の利用も可能になる。

プロパーローンには、「融資の金額に制限がなくなる」、「アパートローンの対象外のような物件でも条件に合えば融資がつく」などといったメリットがある。

税率の違い

個人事業主と法人では、税率が以下の表のように違う。

個人の税率(所得税+住民税)

課税所得金額 税率 控除額
0~195万円 15% 0円
195~330万円 20% 97,500円
330~695万円 30% 427,500円
695~900万円 33% 636,000円
900~1,800万円 43% 1,536,000円
1,800~4,000万円 50% 2,796,000円
4,000万円~ 55% 4,796,000円

法人の税率(法人税率+住民税率+事業税率)

利益(不動産所得) 税率
0~400万円 約22%
400~800万円 約23%
800万円~ 約36%

 

目安のラインとなるのが、900万円だ。この金額を超えると、法人の税率の方がずっとお得になることが分かる。「家賃年収が1,000万円を超えたら法人化」というのは、この辺りの数字から来ているのだろう。

しかし、肝心なことを忘れてはいけない。個人事業主の場合、本業の給与所得と不動産所得は合算され、合計金額に税率が掛けられる。既に本業である程度の収入がある場合は、最初から法人化しておいた方が税制面では有利なのだ。

保険料の違い

個人の場合、年末調整や確定申告で控除される保険料は、

  • 生命保険
  • 個人年金
  • 介護医療保険

 

などで、控除額は最大で12万円だ。一方、法人の場合は保険の経費化に上限は無い。法人保険の種類によって、全額損金 or 半額損金となる。必要経費として計上できるので、その分、利益を圧縮でき節税に繋がる。

損失繰越期間の違い

購入諸経費が掛かる初年度や、大規模修繕をしたときなどは、所得がマイナスとなり赤字になる場合がある。青色申告をしていれば、この損失分を翌年以降に繰り越し、利益と相殺して節税することが出来るのだが、個人事業主と法人では、繰り越せる期間に違いがある。

個人が3年間であるところ、法人は3倍の9年間繰り越せるので、節税効果は高くなる。

売却益の取り扱いの違い

所有している不動産を売却した時の売却益の取り扱いにも、個人と法人では違いが出てくる。個人が売却した時に出た利益は「譲渡所得」とされ、不動産所得や給与所得と合算されない。法人の場合は、賃貸収入などの利益と同様に扱われるので合算される

この、「合算される」 or 「合算されない」の違いは大きい。

不動産所得と合算される法人は、他の必要経費を計上することで利益を圧縮して節税につなげられるが、合算されない個人は、たとえ不動産所得が赤字になっていても、譲渡所得には、まるまる税金が掛かってしまうのだ。

例えば、売却による利益が1000万円出た場合を考える。その年の経費が250万円かかっていたとする。個人の場合は、1000万円がそのまま課税対象となる為、「1000万円×43%=430万円」が税金として請求される。一方で法人の場合は、750万円が課税対象となる為、「750万円×23%=173万円」が税金として請求される。

法人では257万円も個人よりお得になるのである。

減価償却の違い

減価償却費を計上することで、利益を圧縮して節税に繋げる。これは不動産投資の基本なのだが、減価償却費を計上することで赤字になってしまうと、「融資」という面で不利になることがある。

しかしこの減価償却の取り扱いは、個人と法人で異なっているのだ。個人は「強制償却」の一択だが、法人の場合は「任意償却」が可能となる。

個人の場合、算定された減価償却費の額は、毎年その全額を経費に計上しなくてはならない。たとえ赤字であってもだ。一方、法人の場合には、減価償却費の枠内であれば、0円~その枠の限度額まで任意に計上することができる。

 

例えば、減価償却費計上前の利益が100万円、減価償却費の枠が200万円の場合。

減価償却費の計上金額 税引前利益 ポイント
0円 100万円 融資に有利となる
200万円 ▲100万円 法人税0円、
欠損金を翌年に繰り越し
80万円 20万円 黒字にはしたいが、
税金は少なくしたい

 

法人であれば、このような利益の調整が可能になるのである。

 

アパート・マンションの賃貸経営は個人事業主と法人ではどっちがお得?

他の要件では、個人と法人ではどちらがお得なのだろうか。

以下のように一覧表にまとめてみた。

個人事業主 法人
初回融資の難易度 同じ 同じ
融資の総額や条件 ×
税 率 ×
別途かかる諸経費 ×
計上できる経費 ×
利益と損金の相殺 ×
欠損金の繰越 ×
相続対策 ×

 

個人より、法人の方が圧倒的にお得度が高い。以下に詳しく解説する。

初回融資の難易度

初回融資に関しては、個人も法人も難易度は同じだ。金融機関にとっても、個人も法人も「実質同一債務者」だからだ。

ただし、新設の法人の場合は、不動産賃貸業の実績がないため融資に消極的な銀行も増える。新設法人でも融資を実行してくれる銀行は少ないが、「無い」事はないのでぜひ粘り強く銀行開拓を行ってほしい。

融資の総額や条件

初回融資では法人も個人も同じだが、不動産賃貸業の実績を積んでいく事によって、融資の受けやすさや融資の限度額は大きな違いが出てくる。年収の5倍、10倍と融資を受けて規模を拡大していくのであれば、法人として実績を積んでいく必要がある。

個人では、パッケージローンであるアパートローンしか利用できず、融資の限度額は高属性であっても2億ほどが限界である。完全にオーダーメイドで条件が組まれるプロパーローンを利用すれば、融資の総額に限度はなくなり、低金利での融資も可能になる。

プロパーローンは銀行が完全にリスクを負うローンである為、実績を積んで信頼関係を構築する必要があるのだ。

税率

上で見てきたように、不動産所得が330万円以下なら個人の方がお得だが、900万円を超えると法人の方がお得になる。しかしこれは、不動産投資以外の収入が無い場合の話だ。

個人の場合は給与所得と合算されるため、サラリーマン大家の場合、注意が必要だ。

個人の所得が600万円、不動産所得が330万円となると、合算で930万円となり、43%の税率が課税されてしまうのだ。

別途かかる諸経費

この項目に関しては、個人の方がお得だ。法人の場合、以下の諸経費がかかる。

  • 設立に掛かる費用
  • 税理士報酬

 

また赤字になった場合、個人なら住民税は掛からないが、法人の場合は必ず7万円程支払わなければならない。

計上できる経費

保険料の損金計上をみても法人の方がお得だったが、他にも経費の範囲が広がるものがある。

役員報酬

自分だけでなく配偶者などの家族も役員にして、報酬を経費として計上できる。

退職金

法人なら代表取締や役員への退職金を支払うことも可能で、その全額を経費として計上できる。

自宅の社宅化

事業とは関係のない居住専用の自宅家賃を社宅扱いすることで、50%程度を経費計上することが可能だ。

利益と損金の相殺

投資用の不動産を売却した場合、譲渡益や譲渡損が発生するが、個人の場合、事業所得や給与所得と合算して(損益通算)、相殺することは出来ない。(マイホームの場合は特例あり)不動産の譲渡に関しては、譲渡所得同士でしか損益通算出来ないのだが、法人にはそのような縛りは無い。

「赤字が続いているので仕方なく物件を手放したが、思わぬ利益が出た。」このような場合、個人はその譲渡益に税金が掛けられてしまうが、法人は損益通算して利益が相殺されてしまえば税金が掛からない。

例えば、200万円の経費が発生した年に、物件を売却し500万円の売却益が得られたとする。個人の場合は、500万円に対して30%の税率がかかり、150万円が税金として徴収される。一方で法人は、300万円に対して22%の税率がかかり、66万円の税金が徴収される。

法人の方が80万円ほど徴収される税金が少なくなるため、法人の方が断然お得だろう。

欠損金の繰越

欠損金の繰り越しは上で見てきたとおり、個人が3年間で、法人は9年間に渡って繰り越せる。しかし、投資物件の譲渡損は別だ。個人の場合は、翌年以降に繰り越すことは出来ない。

一方で法人は、通常の欠損金と同様、9年間に渡って繰り越すことが可能だ。こちらも法人の方がお得な事が分かるだろう。

相続対策

相続対策については、圧倒的に法人がお得となる。

個人 法人
相続税の対象 所有している不動産の
評価額
所有する非上場株式
不動産の移転登記 必要 不要
相続人が複数の場合 分割で揉める 株式を分割するだけなので
揉めない
生存中の資産の移転 出来ない 役員報酬などによって
早くから移転できる

 

個人で相続が発生した場合、所有している不動産の評価額に対して相続税がかかるが、法人の所有している不動産に対しては相続税はかからない。その代わり、オーナーが所有していた、非上場株式に対して相続税が掛かる。

この株式の評価額は、「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」によって評価されるのだが、法人が借入金を用いて不動産を保有している場合、借入金を控除した残りの部分が株価となる。つまり、借入額が多ければ株価の評価が0円になることもあるのだ。

不動産を分割するのは大変だが、株式なら分割するのも簡単だ。相続人が複数いる場合、相続に関して揉めることも多いが、株式での相続ならその心配は激減する。

また、生存中に妻や子供たちに、役員報酬などの形で早くから資産を移転しておけば、相続税の金額を減らすことも可能だ。支払った役員報酬は、相続税の納税資金に充てることも出来る。

 

結局個人事業主と法人のどっちがお得?

 

結論からいえば、法人の方が享受できるメリットが多く、断然お得だと言えよう。

今後「本気」で事業を拡大したいのであれば、法人化に向けて積極的に動くことをお勧めする。しかし、全員が法人化を目指す必要は無いと思う。

たとえば、

  • 申告上常に赤字のため、税金を納めていない。(積極的に節税する必要が無い)
  • これ以上物件を増やすつもりはない
  • 法人化に伴うコストの増加や事務の複雑化にストレスに感じる

 

このような状況なら、無理して法人化するメリットも無いだろう。

まずは、自分が目指す目標は何なのか、その点を再確認し、どのタイミングで法人化するのが良いのかを、じっくりと検討することから始めてみよう。

 

まとめ

アパート・マンションの賃貸経営は、法人で行った方がお得だ。特に税制面で、
法人の方が個人事業主よりも優遇されているのがよく分かる。実績を積み上げ信用を重ねれば、融資が受けやすくなる点でも、法人の方が有利だろう。

個人事業主から法人への切り替えのタイミングとして、税率が逆転する900万円が一定のラインだと言えるが、サラリーマンなど給与所得がある場合は合算されるので、そのラインはより低くなる。

 

しかし、全員が法人化を目指す必要はないだろう。戦略的に赤字を出し節税する必要の無い方や、これ以上物件を増やすつもりの無い方にとって、法人化はコストの増大、事務の煩雑さという面でストレスを与える可能性が高い。

  • 今後本気で事業を拡大したいと思っている
  • 相続で揉めたくない
  • 少しでも節税したい

 

そのような方にとって法人化はメリットが多いので、積極的に目指して欲しい。




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