重量鉄骨と軽量鉄骨は何が違うのか?

重量鉄骨はどのように減価償却するのか?

 

不動産投資家が物件を購入する時、一番に注目するのは利回りだろうが、耐用年数がどれくらい残っているのかも重要なポイントとなる。既に耐用年数を超えていたり、残存年数が短い築古物件は、融資が下りないケースがあるからだ。

重量鉄骨造は耐用年数が比較的長いため、融資を引きやすく投資家から好まれる構造だ。

木造や軽量鉄骨造と比べて躯体がしっかりしており、高級感あふれる外装のものも多いため、「自分が住むのなら重量鉄骨」と思っている投資家もいるだろう。

 

ここでは、重量鉄骨造と軽量鉄骨造の違いや、減価償却の仕方に焦点を当てて解説していく。特に減価償却の手順は一度覚えてしまえば後々まで使用できるので、是非役立ててほしい。

 

重量鉄骨造と軽量鉄骨造の違いとは?

重量鉄骨造と軽量鉄骨造の違いは、躯体に使われる鉄骨の厚さだ。

鉄骨の厚さが6mm以上なら「重量鉄骨」。6mm未満なら「軽量鉄骨」と区分される。厚さが違うだけで、使用している鉄材は同じものだ。

 

重量鉄骨は厚さ6mm以上のH型鋼やI型鋼を使用した構造で、主にビルやマンションなど大規模な建物に用いられる。賃貸物件では、マンションのような少し高級な物件に採用される事が多い。

間口を広く取ることも出来るため、1Fを店舗や駐車場にした物件もよく見かける。地震にも強く、住人同士の振動音もさほど気にならない。

軽量鉄骨は3~4mmのリップ溝形鋼や角型鋼管などを使用した構造で、住宅や小規模な店舗、倉庫などに用いられる。賃貸物件では、2階建てのアパートやコーポに多く採用される。

厚みが少ないので、外部からの音や振動が伝わりやすいのが難点だが、防音材や遮音材である程度は解消される。

 

建築コストは鉄骨が薄ければ薄い方が安くなる。解体時も同様だ。しかし同じ鉄材であるので、錆びに弱い、熱に弱いなどの弱点はほぼ同じだ。

 

国税庁が発表している重量鉄骨造の耐用年数は34年?

重量鉄骨造と軽量鉄骨造では、減価償却する際の法廷耐用年数が違う。こちらは、厚さ6mmで区分されない。

国税庁の耐用年数表では、鉄骨造は次のように3段階に区分されている。

骨格材の肉厚 法定耐用年数
4mmを超えるもの 34年
3mmを超え4mm以下のもの 27年
3mm以下のもの 19年

 

税法上では、4mmを超えた、法定耐用年数34年のものが重量鉄骨造と呼ばれることになる。有名ハウスメーカーの軽量鉄骨アパートには、肉厚2.3mmの鉄骨材を使用することがほとんどで、稀に3.2mmの鉄骨材を使用している。

耐用年数に15年も差があると、減価償却費の計上に影響が出てくるのは当然だが、融資にも大きな影響を与える。一般的に銀行は、耐用年数超えや残存年数が少ない物件への融資を渋るからだ。軽量鉄骨だと木造の22年よりも短く、融資を受けるのが一番難しい物件となる。

 

物件概要を見ていると、構造の欄が「鉄骨造」と記載されていて、重量鉄骨なのか軽量鉄骨なのかハッキリしないものを良く見かける。明らかに軽量鉄骨だろうと思われる物件でも、業者の営業が「重量鉄骨です」と言い張ったというケースも耳にする。

次の点に注目すると、大まかだが、両者の違いが分かるだろう。

  1. よく見かける有名ハウスメーカーの2階建て物件は、ほとんどが軽量鉄骨
  2. 見学の時に階段や廊下を歩いて振動や揺れを感じたら、軽量鉄骨の可能性が高い
  3. 3階建て以上の物件は、ほとんどが重量鉄骨

 

両者の違いは、税務上の処理や解体費用などに大きく影響するので、事前にきちんと確認しておく必要がある。

 

積水ハウスの重量鉄骨は耐用年数が伸びるの?

 

 

重量鉄骨も、ハウスメーカーや工務店によって躯体の耐震性や耐久性に差が出てくるが、しっかりした躯体なら耐用年数が伸びるという事はあるのだろうか。

例えば積水ハウスは、3,4階建ての重量鉄骨造の賃貸マンション、“ベレオ”を展開しているが、このシリーズの物件は、H型鋼鉄骨をハイテンションボルトで接合している。このボルトは超高層ビルの建築に用いられているもので耐久性が非常に優れている。

また、柱と基礎の接合部に高強度のSS490鋼を使用し、M24のアンカーボルト固定している。このため、震度7クラスの地震でも倒壊しない「耐震等級3」を備えている。

 

このように、他の重量鉄骨と差別化したものであれば、耐用年数はRC造並みになっても良いのではないのか?と思われるが、法律はそれ程柔軟ではない。

どんなに耐震性・耐久性が優れていても、コンクリートを使っていない重量鉄骨造の耐用年数は「34年」のみ。これだけだ。

 

重量鉄骨造の減価償却の具体的な計算方法とは?

重量鉄骨造の原価償却は、具体的にどのように計算するのだろうか。

減価償却とは?

会計では、1年間の売上から経費を引いたものが所得となり、それに税率を掛けて納税する。

しかし長年使用でき、かつ、金額の大きいもの(資産)を購入した時に全額を経費として計上してしまうと、バランスを欠いてしまう。計上したその年だけ大赤字となってしまい、その年以降は経費計上できないため、所得がアップして税額が上がってしまうからだ。

資産の購入金額を利用可能期間(法定耐用年数)で按分し、それぞれの年に経費計上すれば、非常にバランスが良くなる。これが「減価償却」と呼ばれるものだ。

資産購入のためにキャッシュが出ていくのは、1年目のみだ。それ以降に減価償却費として計上する金額は、あくまでも帳簿上の費用であり、実際に手元から出ていくお金ではない。

減価償却はお金を支出すること無く所得を圧縮することが出来るため、節税に効果を発揮するのだ。

減価償却が出来る費用項目は?

重量鉄骨造の物件を1億円で購入したとして、その全額が減価償却の対象になるわけではない。年数を経ても劣化したり陳腐化しない資産、例えば、土地・借地権・書画骨董などは、減価償却の対象とはならないのだ。

なので、1億円のうち減価償却できるのは、建物部分だけになる。建物も、更に「建物躯体(本体)」と「建物設備」に分ける。躯体と設備では耐用年数が違うからだ。

また減価償却は、使用可能期間が1年未満で、取得金額が10万円未満のものは対象外となる。これらのものは、取得した年に全額経費計上する。

重量鉄骨の減価償却の方法は2つ

減価償却には、「定額法」と「定率法」の2つの計算方法がある。

以前はどちらかを選ぶことが出来たが、法改正により、平成28年4月1日以降に取得したマンションは、建物本体及び建物設備ともに定額法しか認められていない。

これは、購入や自己の建設以外の、相続、遺贈、贈与によるものにも適用される。

定額法

定額法とは、減価償却の対象となる資産を耐用年数の期間中、毎期同じ金額を減価償却していく方法。1年目から最後の年まで減価償却の金額は変わらない。

定率法

毎年一定の割合で減価償却費を計算する方法で、最初は償却額が大きいが、年々償却額が小さくなっていく。収益力が低下する後年の負担を小さくできるのがメリット。

定額法でも定率法でも最終的に計上できる金額は同じになる。

重量鉄骨の減価償却方法

重量鉄骨造だからと言って、他の不動産と減価償却の仕方が違う、という事は無い。減価償却の方法は次の通りになる。

  1. 土地評価額と建物評価額に分ける
  2. 建物部分をさらに“建物躯体(本体)”と電気設備や給排水設備などの“建物設備”に分ける
  3. それぞれの法定耐用年数を調べ、計算する

重量鉄骨で減価償却できる費用を見極める

ここでは、土地と建物の切り分け方、本体と設備の切り分け方について解説していく。

土地建物との切り分け方

売買契約書に土地評価額と建物評価額が記載されていれば、その金額に従う。記載されていない場合は、税務署が「合理的だ」と認める方法で按分する必要がある。

具体的には、次のような方法で按分する。

  • 土地、建物の固定資産評価額や相続税評価額で按分する
  • 譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率によって按分する
  • 専門家による評価を参考にする
  • 売主が消費税課税業者の場合は、購入に伴う消費税によって割り戻して計算する

 

按分方法は一度決めたら、それ以降、余程のことが無い限り変更は出来ない。

本体と設備の切り分け方

新築の場合は建物評価の内訳がきちんと明記されている事が多いが、中古の場合、簡単に区分出来ない事がある。

一つ一つ区分した方が節税に繋がるのだが、合理的に分けられない場合は、両者を区分せず建物躯体に盛り込んでしまう事も多い。

重量鉄骨の減価償却方法を決める

平成28年4月1日以降に取得したのであれば、建物本体も設備も定額法で計算する。

それ以前に取得した物件は、

  • 建物本体・・・定額法のみ
  • 設備・・・・・定額法か定率法を選択

 

定率法を選んだ場合は、確定申告の時に届け出書を提出しなければならないので、注意が必要だ。

重量鉄骨の減価償却ができる利用耐用年数を算出する

築年数が、法定耐用年数を超えている場合と、超えていない場合で計算は異なってくる。

築年数が法定耐用年数を超えている場合

 耐用年数 = 法定耐用年数 x 20%

 

【築36年の物件】

  • 建物本体 ・・・ 34 x 20% = 6年 ( 端数切り捨て )
  • 設備 ・・・ 15 x 20% = 3年

築年数が法定耐用年数を超えていない場合

 耐用年数 = 法定耐用年数 - (築年数 x 80%)

 

【築10年の物件】

  • 建物本体 ・・・ 34 - ( 10 x 80% ) = 26年
  • 設備・・・ 15 - ( 10 x 80% ) = 7年

 

【築20年の物件】

  • 建物本体 ・・・ 34 - ( 20 x 80% ) = 18年
  • 設備 ・・・ 15 x 20% = 3年

重量鉄骨の減価償却費を計算する

利用耐用年数が何年か分かったら、国税庁のHPにある「減価償却資産の償却率表」から、償却率を確定する。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070914/pdf/06.pdf

例えば、築20年の物件の場合、次のようになる。

  • 建物の利用耐用年数18年 ・・・ 0.056
  • 設備に利用耐用年数3年 ・・・ 0.334

 

評価額にこの償却率を掛けることで、減価償却費が算出される。

【実例紹介】具体的な計算は?

では実際に次の事例で計算して見よう。

  • 築20年3ヶ月
  • 建物価格・・・3,000万円
  • 建物設備・・・300万円

 

手順1. 耐用年数と償却率を調べる。

築20年を1月でも超えれば、端数切り上げとなるため、築21年で計算する。

耐用年数と償却率は次の通り。

  • 建物本体 ・・・ 34 - ( 21 x 80% ) = 17年 ・・・ ( 償却率 0.059 )
  • 設備 ・・・ 15 x 20% = 3年 ・・・ ( 償却率 0.334 )

手順2. 減価償却費を計算する

減価償却費は、次のようになる。

  • 建物本体 ・・・ 3,000万円 x 0.059 = 177万円
  • 設備 ・・・ 300万円 x 0.334 = 100.2万円

1年目~3年目までは、102万+100.2万円=279.2万円を減価償却費として計上できる。

4年目~17年目までは、177万円のみ計上できる。

 

重量鉄骨って何年くらい持つの?

法定耐用年数は、あくまでも税法上の便宜的な数字であって「建物の寿命」ではない。重量鉄骨は34年で寿命を迎えるわけではないのだ。

では、どのくらい持つのかというと、まだ歴史が浅いために想定数字しか出すことが出来ない。一般的に建築物は、木造<鉄骨造<RC造の順に寿命が長いと言われており、これは耐用年数にも現れている。

しかし、世界最古の木造建築である法隆寺は1300年以上前に建造されたものであるし、RC造なら、1911年に建てられた三井物産横浜支店は100年を超えて今も現役で頑張っている。

 

重量鉄骨の場合、錆びやボルトの接続箇所の破損に気を付ければ、RC造よりも長持ちすると断言する専門家もいる。

外壁材や支持材の寿命が短いために、何度も大規模修繕を行う必要はあるが、メンテナンスさえ怠らなければ十分に長持ちする構造だ。

ハウスメーカーの点検も60年まで想定されている。

 

まとめ

鉄骨の厚さが6mm以上のものを重量鉄骨造と呼ぶのだが、税法上では厚さ4mm以上のものが重量鉄骨扱いとなる。

法定耐用年数は34年で、軽量鉄骨の19年よりも15年も長い。

施工方法によって耐震性や耐久性に違いが出るが、耐用年数は鉄骨の厚さのみで決まる。

 

土地の評価額は減価償却できないので、まずは土地と建物に分けることから始める。

更に建物の躯体(本体)と設備部分に分割し、それぞれに償却率を掛けて算出する。

計算方法は耐用年数を超えたものと超えていないもので異なるので注意が必要だ。

 

法定耐用年数はあくまでも税法上のものであり、建物の寿命ではない。

重量鉄骨造の歴史は浅く、何年持つのかは推定でしか語れないが、錆びとボルトの接続部分のメンテナンスを怠らなければ、RC造よりも長持ちすると言う専門家もいる。

途中で大規模修繕を何回か行う必要はあるが、丁寧に使えば非常にお得な物件だと言えるだろう。




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